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網岡健司「地域進化論」を考える 〜持続可能なまちづくりのビジョン、ミッション、パッション〜 第三話

  • 2018年11月27日
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前回は、地域の進化そして持続可能なまちづくりに必要と思われる3要素を提示しましたが、その内の「ビジョン」について一緒に考えてみたいと思います。

ビジョン 〜「人間社会の進化」の来し方行く末を考える〜

さて、果たして世界は、我々の社会はどこに向かおうとしているのでしょうか?
未来を予測することはとても難しく、万人が納得する「正解」は無さそうですが、少なくともこれまでに人類が経験したことのないパラダイム・シフトが求められる時代に突入しようとしている(あるいは既に渦中にいる)ことは、多くの方々が指摘しているところです。

本コラムは、人類の歴史や未来予測を深掘りする場ではありませんし、筆者の知識、能力をはるかに超えてしまうので、ここでは筆者が私淑しているお二方のビジョン、考え方をご紹介して、皆さんの思索のヒントにしていただければ、と思います。

1つ目は、広井良典先生(*1)の「定常型社会論」です。
同氏は福祉政策のみならず公共政策や科学哲学など幅広い分野で活躍されていますが、自著「創造的福祉社会」の中で、<私たちはどのような時代を生きているか>という問いを立て、以下のように述べています。
「限りない経済成長を追求する時代は終焉を迎えた。私たちは、人類史上三番目の『定常期』に直面している。」
(以下、再び引用)
「すなわち、人間の歴史を『拡大・成長』と『定常化』という視点でながめ返すと、そこに大きなサイクルを見出すことができる。
第一に人類誕生から狩猟・採集時代、第二に約1万年前の農耕の成立以降、第三に約二百年前以降の産業化(工業化)時代に3つで、これは人口の増加や経済成長とそれらの定常化のサイクルと概ね重なる。」
とした上で、これらのサイクルにおける経済的、数量的な拡大、成長の時代を経て何らかの意味でのプラトー(成熟・定常期)に移行する際に、「心のビッグバン(意識のビッグバン)」(装飾品、絵画や彫刻品などの芸術作品が約5万年前の時期に表れることを人類学的に指したもの)や、「枢軸時代あるいは精神革命の時代」(紀元前5世紀前後の時代に地球上各地で哲学、宗教など普遍的な原理を志向する思想が“同時多発的”に生成した時期)といった文明的、精神的な進化が生じたのでないか、との仮設を提示されました。(図-1を参照)
画像:網岡コラム3回

そして、現在迎えようとしている三番目の定常化の時代でおこる人間の内面的な進化として「地球倫理と個の倫理の融合」といったものが生まれるのではないか、との論考に基づき、この時代は「“義務としての経済成長”から解放され、真の意味での各人の『創造性』が発揮され開花していく社会ととらえられる。」と指摘しました。

広井氏は、次のようにも語っています。
「成長・拡大から成熟・定常化への大きな移行期であることは、ひとつのポジティブな希望として浮上してくる。」
「人口減少社会として『世界のフロントランナー』たる日本は、そのような成熟社会の新たな豊かさの形を先導していくポジションにあるのではないか。」

いずれも、とても勇気づけられる言葉です。
(次回に続く)

【注釈】
*1:広井 良典
東京大学教養学部、同大学院修士課程修了後、厚生省勤務をへて1996年より千葉大学法経学部助教授、2003年同教授。2016年より京都大学こころの未来研究センター教授。専攻は公共政策及び科学哲学。著書に『定常型社会』、『人口減少社会という希望』、『ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来』など多数。『日本の社会保障』でエコノミスト賞、『コミュニティを問いなおす』で大仏次郎論壇賞受賞。

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網岡 健司

株式会社エックス都市研究所参与
名古屋大学大学院工学部原子核工学科修了
新日本製鐵株式会社(現 日本製鉄株式会社)に入社し、八幡製鐵所配属。同社のスペースワールド班に参加、以降一貫して北九州市八幡東田地区の都市再開発事業などの地域開発に携わる。
北九州市特区専門官、参与ならびに北九州市立大学院特任教授等を歴任(非常勤)、産官学一体の立場から持続可能なまちづくり推進の一環として社会変革を促す地域プロジェクトを企画・プロデュース。「情報の港」北九州e-PORT構想やエネルギー革命をもたらす東田コジェネ事業、「環境パスポート事業」、スマートコミュニティ実証事業、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録など数々のプロジェクトを手掛けている。
他にNPO法人里山を考える会理事、九州国際大学大学院特任教授「地域政策論」担当、八幡東田まちづくり連絡会会長などを務める。

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