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信時正人の都市学入門(9)ヨコハマSDGsデザインセンター

  • 2018年12月27日
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ヨコハマSDGsデザインセンター 信時コラム9回

今年6月、内閣府の方でSDGs未来都市が選定されました。
全国で29の県・市が選ばれ、加えて、その中の10県・市が自治体SDGsモデル事業として選定されました。
横浜市は、そのモデル事業都市となり、具体的モデルとなる事業の実現化が求められています。

そのモデル事業となる「ヨコハマSDGsデザインセンター」に関して11月に事業者選定コンペが行われました。
我々エックス都市研究所は、地元の神奈川新聞、tvk(テレビ神奈川)、tvkコミュニケ―ションズ、凸版印刷の5社で連合体を組んで、共同申請し、見事、選定される結果となりました。

世界が合意したSDGsを踏まえ、環境未来都市の横浜市を更に発展させる中核事業の推進主体となるということで、非常に責任の重い仕事になると思います。
当社は、このチャレンジに果敢に挑戦し、会社としての機能アップを図る事も然ることながら、今後、日本の各都市への先進的なモデル提供や、市民の満足度の向上を通して、活力ある世界に誇れる自治体となり、そしてそれを通した活力ある企業群の形成に貢献し、世界に誇れるSDGs未来都市を創っていく核となりたいと考えています。

横浜市はこれまで、内閣府選定の環境モデル都市、環境未来都市として先進的なまちづくりを進めてきていることはご案内の通りです。
その間に、経済産業省の次世代エネルギー・社会システムの実証地域にも選定されていて、日本の中ではトータルな意味での先進都市であることは言うまでもありません。
そこが、更に今回、SDGs未来都市となったわけです。
これと同じ経緯を持っているのは、他には北九州市のみです。
都市の成り立ち、僕は人格ならぬ都市格と呼んでいますが、この特徴の違う二都市が今後とも日本を牽引していくように、協働しながら頑張っていくことができればなあ、と思っています。

横浜市が立ちあげる、SDGs未来都市の中核となる事業、ヨコハマSDGsデザインセンターとはどういうものか。
「人」「モノ」「まち」とともに成長する「SDGsデザインセンター」というのがキャッチフレーズになります。
環境、経済、社会、の所謂トリプルボトムは、これまでも環境未来都市の文脈の中で、基本戦略として言われてきたものです。
この三分野、それぞれを配慮しつつ、偏ることなく、総合的な視点での政策展開を図っていく、ということです。

今後は、それら環境、経済、社会の課題の同時解決とグローバルなパートナーシップの視点からさらに発展させ、進化させることでSDGs未来都市を形作っていくことが求められていると言えます。
まだ、具体的な戦略、具体的事業はこれから決めていきますが、既に、種々の候補プロジェクトが持ち込まれたり、内部で企画したりしています。

近々、発表の運びになるのではないかと思いますが、今後の具体的なプロジェクト創出に向けては、下記のような段階を踏んで取り進めていくのかな、と思います。
(1)環境、経済、社会のニーズやシーズを分野・組織横断的に収集、調査、分析(マーケティング)
(2)解決策の企画・立案。担い手の募集、発掘、育成、グルーピング、実証実験等の協力、支援(コーディネート)
(3)ソリューションの提案「同時解決型「大都市モデル」の創出(イノベーション)
(4)国内外への発信(プロモーション)

こういった段階の至るところで、大学、企業、研究機関、地域コミュニティー等との連携を図り、国内外の都市等との連携も模索していきます。

世間では、国際的に事業展開している大企業の反応がさすがに早く、既に、SDGsカンパニーであるという宣言をしているところも少なくないと思います。
こういうところとの連携を推進していくことも重要ですし、横浜市では、既に、いくつかの先進的なお考えをお持ちの地元中小企業の方々が勉強会を開催し、進めている事例もあります。
これらは非常に勇気づけられる事であり、面白いと思っています。
市内河川をテーマにした動きや、子供の絵日記をベースにしている人たちなども同様です。
これらの方々の熱意とやる気をもっと醸成していくことも自治体SDGsの非常に大事なことと考えています。

今後、私自身がヨコハマSDGsデザインセンターのセンター長として動いていくことになりますが、大企業、地元中小企業は兎も角、大学、小中高等の教育機関、研究施設等、外では、他の先進自治体、海外の都市などとも連携して、SDGs 未来都市の名前に恥じない活動を繰り広げていきたいと思っています。
私個人としては上記に加え、更にこれまで取り掛かってきた、温暖化対策の一環としての世界的な動きであるブルーカーボン(横浜市が日本での仕掛け人)と、それの関連としての海洋産業振興を含む海洋都市への動きや、地域の自治会の発展形の本当の意味でのエリアマネジメント体制の模索を追求できればなあ、と考えています。

先日、COP24でパリ協定の実行ルールが概ね決まりました。
この協定は地球温暖化対策を進展させるキーであるのですが、これまで人類は、エネルギーの大量消費によって生活の質を上げることを目標にしてきました。
しかし、パリ協定は、エネルギーの大量消費を止めていく方向にあります。
一方、SDGsは生活の質を上げていくことを目的としています。
エネルギーの節約、温暖化対策をしながらも生活の質の向上を図っていく、というこれまでにない方策を人類はやっていかないといけなくなっています。
しかし、それにトライしていくしかない状況にあると思っています。

その意味でも種々の分野、人々が協働して動いていかないといけない、自治体もその中の市民に一番近い一つの単位として上手く役割を果たしていかないといけない時代となりました。
これまでの延長にはないまちづくりをやっていかなくてはなりません。

これをお読みの方々の多大なるご理解とご協力を、今後頂いていければ本当にうれしく思います。

ヨコハマSDGsデザインセンターパンフレット(PDF:3MB)

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信時 正人

株式会社エックス都市研究所理事 和歌山県出身
東京大学都市工学科卒
三菱商事株式会社(情報産業、開発建設、金融)を経て、(財)2005年日本国際博覧会協会(政府出展事業 企画・催事室長:日本館の企画・運営、政府主催催事担当)、東京大学大学院特任教授(UDCK、柏の葉アーバンデザインセンターの立ち上げ)、横浜市入庁後に都市経営局都市経営戦略担当理事、地球温暖化対策事業本部長等を歴任(横浜スマートシティプロジェクト、環境未来都市等推進)。
東京大学まちづくり大学院非常勤講師、横浜国大客員教授等、他に(一社)UDCイニシアチブ理事(UDCの拡大と立ち上げ支援を目的に出口東大教授等と設立)

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