時代読解コラム

信時正人の都市学入門(8)台中フローラ

  • 2018年11月22日
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台中フローラ 信時コラム8回

11月3日から台中で始まった台中フローラ世界博覧会に行ってきました。台湾の本島西部に位置する台湾第二の都市で開かれている所謂、花博です。

花博と言えば、日本では1990年に開かれました、国際花と緑の博覧会(大阪)が有名ですね。僕も行ったことがあります。
オランダのハーグに本部を置くAIPH(国際園芸家協会)が認定する国際園芸博覧会というものには種別として、各国代表の参加による国際的園芸博覧会(A類)と国内園芸博覧会(B類)があります。
大阪の花博はA1=大規模国際園芸博覧会という最上位のランクに位置されるものでした。ランキングの詳しい内容はここでは省きます。
その後、日本では、2000年に国際園芸・造園博「ジャパンフローラ」(淡路花博)、2004年にしずおか国際園芸博覧会「パシフィックフローラ2004」(浜名湖花博)が行われました。この二つは小規模国際博と大規模国内博、A2+B1という範疇でありました。細かい説明は省きますが、大阪の花博に比して国際的にはワンランク下の博覧会でした。

今般の台中のそれは、淡路花博や浜名湖花博と同じランキングですが、これまでとは違った大きな構想を持ち、いろんなチャレンジを行っている博覧会なので注目しています。
それは何かといいますと、一つは台中市の都市戦略です。
台湾では直轄である台中市を今後「花都(グリーンシティー)」に育てていく機会と捉えているイベントであることがあげられます。

世の中スマートシティーという言葉の花盛りです。
日本は、最近になってやっと国土交通省が経団連と組んで推進していくことになったようですが(これまで内閣府や経済産業省、環境省が進めてきている)、現時点では都市全体でとなると、打ち出し方においても世界に後れを取っている感があります。
しかし、台湾では、もしかしたら、そのまた先を構想しているのでは、と思われるのです。

これは私の勝手な考えかも知れませんが、具体例をあげていきます。
花博と言いますと、花壇を多く作ってそれを楽しむ、生け花も含み、花そのものによるデザインの博覧会だ、というイメージがありますね。
それはその通りだし、今回もそういった展示も多くありました。
しかし、今回、同行していました、これまで私も参画していた2005年の愛・地球博を始め、種々の国際博覧会でチーフプロデューサーを務めた方が、特に強調されていたのが、この台中フローラは、花と緑の有する価値を、生物・生態系から生産流通、そして生活文化にまで広げた展示をし、都市像までを示しているのだ、ということです。

台中フローラ2 信時コラム8回

まず、目についたのは台湾の特産品でもあるランの新しい品種開発の展示です。
日本も多くを輸入しているランですが、単にきれいなランを育てている、ということではなくて、その裏にある技術開発を進めていることを非常に強調していました。これは新しい産業にもつながりますね。
農業技術開発の展示も大々的にありました。

また、竹の新しいデザインでの建築物の展示や、日本の建築家、隈研吾さんの三角形を基にした新しい構造による木造建築の提案や、台湾人建築家による、これまでにないようなエコハウスの提案展示もありました。

台中フローラ3 信時コラム8回

木質の新しい素材の可能性(これも新産業になりうる)や、それを使ったデザインの新規性、それを製品にした際の家などのモノとしての魅力と、それに関わる環境性能による地球環境への貢献、等々、種々の効果が出てくるものと思われます。
会場での見せ方も、ランドスケープデザインとランドアートのコラボレーションが行き届いています。
単に花をきれいに並べる、という事ではなくて、地域の形状や状態に合わせたランドスケープのデザインとその中でのアートのコラボレーションを実施しています。

台中フローラ4 信時コラム8回

これらは多分、ランドスケープデザイナーとアーティストの協働作業が実現したものなんでしょうね。
事実、それは素晴らしいことだと思います。

また、写真家の蜷川実花さんの花の写真も迫力を感じました。
金属工芸と花のコラボレーションもあり、種々の異種のものがコラボレーションしているのも特徴ではないでしょうか?
室内でのきれいな花の展示というだけではなく、こういった、馬場だったり、公園だったり、或いは農場や、リバーウォークなどの種々の外部空間を使ったダイナミックなものであり、将来の都市像への提案を見ているような感じです。

私は、観光大使ではないですけど、来年の4月24日までやっていますので可能な方は行ってみてください。
ハイテク技術を駆使した都市、スマートシティーは私としてもこれまでトライしましたし、今後とも進んでいくものとは思いますが、人間が住む都市ですので、緑や花は必要不可欠です。
ハイテクを裏に従えてのグリーン&ガーデンシティーへの胎動の端緒が見られると思います。

この稿が出る頃には2025年に大阪万博が開催されるかどうか帰趨がはっきりしていることと思います(11月23日発表)。
また、日本で再度、大きな国際的な花博も開催されることもささやかれています。
単に展示だけではなく、そこには大きな哲学とそれに基づく都市づくりへの希望が必要だと思います。

信時 正人

株式会社エックス都市研究所理事 和歌山県出身
東京大学都市工学科卒
三菱商事株式会社(情報産業、開発建設、金融)を経て、(財)2005年日本国際博覧会協会(政府出展事業 企画・催事室長:日本館の企画・運営、政府主催催事担当)、東京大学大学院特任教授(UDCK、柏の葉アーバンデザインセンターの立ち上げ)、横浜市入庁後に都市経営局都市経営戦略担当理事、地球温暖化対策事業本部長等を歴任(横浜スマートシティプロジェクト、環境未来都市等推進)。
東京大学まちづくり大学院非常勤講師、横浜国大客員教授等、他に(一社)UDCイニシアチブ理事(UDCの拡大と立ち上げ支援を目的に出口東大教授等と設立)

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