時代読解コラム

信時正人の都市学入門(11)まちづくりの要諦(Ⅱ)

  • 2019年04月26日
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信時正人の都市学入門(11)まちづくりの要諦(Ⅱ)

前回の10回目から二か月、インターバルが空いてしまいました。
この間、このコラムでも先日書きました、ヨコハマSDGsデザインセンターのキックオフセミナーがあったりしました。
種々、世の中は進んでいます(笑)。
しかし、世の中、不易流行、まちづくりの要諦は不易なものと思っています。

さて、前回は、まちの基本は食い扶持だ、ということを書きました。
産業づくりとまちづくりは連動していかないといけない、ということでありました。
本当にこの辺は、もっと掘り下げる必要があると思っていまして、次世代の日本が生きていくためにはどのような産業での食い扶持が必要で有効なのか、そして、それを支えるハードとしての都市とはどのようなものであるのか、さらに推進する人材育成、教育はどうあるべきなのか、ということが喫緊の検討課題だと思います。
行政の縦割りは解消されていませんが、この原則にいち早く気づいて、横串を刺した行政運営を成功させたところが、今後、21世紀型まちづくりで先行できるものと思うのです。

さて、今回は、そうした基本戦略の次に、時代の読みという事を話します。

1999年7の月に大きなことが起こりました。
なんでしょうか?

私くらいの年代の方なら覚えていらっしゃるかもしれませんが、当時、大きな話題になった、ノストラダムスの大予言というのがありましたよね。
その予言では、「1999年7の月にアンゴルモアの大魔王が下りてくる」、という事が書かれていました。
はて、これは、大地震が起こるということであろうか、大戦争が勃発するのか、はたまた、疫病が流行るのか、と、喧しかったのを覚えています。
しかし、それらのすべては起こりませんでした。
しかし、実際に起こったことがあります。
なんだと思いますか?

それは、携帯電話のインターネット接続でした。
もしかしたら、これが、アンゴルモアの大魔王だったのかもしれませんが、結果的に悪いことだったのか、どうかはわかりません。

ネットで世界に繋がり、あらゆる情報が手に入る世界になりました。
しかし、その反面、未成年でもアダルトサイトのアクセスができるようになったし、ネット上の犯罪も頻繁に起こるようになってしまっています。

でも、良い面も悪い面も含めて、今の世界の状況への第一歩であったことは間違いないし、技術の進歩の一つで、それを賢く使うのか、そうでないのか、原子力と同じように、人類の叡智が試されているということでもあります。

ともあれ、時代が大きく変わり、21世紀は20世紀とは違ったオペレーションシステム(OS)が必要になったことは間違いありません。

「20世紀の豊かさから、21世紀の豊かさへ・・・」。
これは、私が深くかかわった2005年に開催された愛・地球博の日本館のメインテーマです。
大量生産、大量消費、大量廃棄、これが豊かさの象徴、となりました。

何せ、モノがない時代をなんとかしないといけないと皆が努力してきた結果でそうなったのだと思いますが、それが世界をサステナブルで無くしてしまっている、という確実な側面があらわになってきています。それで、SDGsなんですね。

さて、21世紀の求めるべき豊かさとは何だろう、と熟考しないといけないと思いますが、はっきりしていることは「20世紀で伸長してきた大量生産等にアジャストした20世紀型の企業の時代は終わり、21世紀型の企業の時代へ、そしてあり方へ」、ですね。

上の図ではピラミッドを書いていますが、もっぱら自己完結型で一つ一つが大きくなっていくことを目標にやってきた時代でした。
その大企業群が闊歩していた20世紀。言葉を変えれば、恐竜の時代であったのかもしれませんね。
そして、まさにネットの時代となりました。
そこでは銀河系宇宙で多くの星々が星座をつくっているように、種々のネットワークが出来上がっています。
さらに、その時代に適合した多くの小さなベンチャー企業が続々と出てきています(日本は米国・中国に比べてかなり後塵を拝していますが・・・)。
あたかも、大きな恐竜時代から小さな哺乳類の時代に入ったようです。

もう少し説明しますと、20世紀にはコンピュータはメインフレームと呼ばれる大型計算機が主流でそこにワークステーションという形の端末がぶら下がっていました。
IBMや富士通がその世界の雄でした。
ところが今は、各人が持っている携帯電話。これの能力は、その当時の大型計算機以上の能力を持ちます。
アポロ宇宙船をコントロールしていたコンピュータが手の平にあるともいわれています。
そして、その能力が絶大になった携帯を繋いでいるのがインターネットです。
途方もない記憶容量と、計算の速さがネット上で実現されています。
無論、まだまだ発展するでしょう。

また、この傾向は電力にも波及してきていると思います。
東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーの時代が始まりましたが、太陽光発電や、風力、バイオマスなど、比較的小さな発電所が多く出てくることになりました。
これまでの巨大発電所は、効率は良かったかもしれませんが、災害に弱かったということが証明された、という事でもありましょう。
地域で電力を賄っていく方向も至るところで実現してきています。
それらの小さな発電所を繋いで、また、不安定な再生可能エネルギーを社会実装するためには、スマートグリッドの技術が不可欠です。
ちなみに、横浜市等4か所では、2010年に実証実験が開始され、社会実装への道筋を引きました。
防災や脱温暖化という目的のためにも、小さな発電所のネットワークが必要な時代になったとも言えます。
また、その延長線上で、人の価値の捉え方が変わってくるのではないか、と思います。
即ち、これからは非常に個人の価値に重要性が増していく傾向が出てくると思います。

20世紀には、「△△会社の○○です」、と言えば、それでその人の価値もその△△会社の価値と同様に一体としてみられていたと思いますが、これからはそうはいかない。
○○さんが主体であって、その人の属している会社はその属性の一つでしかなく、実際にその人自身がどのような仕事をしているのか、どのようなネットワークを持っているのかが問われます。

その人とネットワークを繋いでいることで得られる事、情報、人脈の豊富さ、嘘をつかないとか、裏切らないという事はあたり前として、繋がっていることで何をもたらすのか、が重要です。
そうでないならば、その人には情報は入っていかない、という事にもなります。
そして、その人が会社を変わったとしたらそのまま、ネットワークは会社ではなくて、その個人に繋がって移動していく、そのような世界になるのではないか、と思います。
大きなOSの違いが出てくるわけです。

したがって、物事の決めかた、プロジェクトの進め方、も大いに異なってくると思います。
終身雇用に関しても経団連が先日、「もう今後は難しい」、というようなコメントを出しました。
人生100年時代に突入した、という側面もあるからでしょうが。
インターネットに加えて、Iot、AI、ロボット、それらの新しい技術の登場が大いに社会を変えていくはずです。
在宅勤務やサテライトオフィスの発展で通勤する人の数が減少する、とすると、これまでの都市のつくり方でよいのか、ということも大いに考えていかないといけませんね。

前述しましたが、防災、気候変動(地球温暖化対策、適応策と緩和策)、環境問題、エネルギー自由化、少子高齢化、雇用の変化、そしてIot等の新技術、ネットワーク化、金融の変化、等々、こういった21世紀の都市で大いに論じられていかないといけないことが、まだまだ膨大に手つかずになっています。

今は、恐竜時代から哺乳類時代への変化、大規模組織の時代から小規模組織、あるいは個人のネットワークの時代への変化、まさに、時代の変容、変態に合わせて都市も、昆虫における幼虫からさなぎ、そして成虫になる、変態をしていくことが求められています。

国連がSDGsを採択した際の文章には、イノベーションではなく、トランスフォームという言葉が出てきています。
地球も人類もコロッと変わってしまっていかないといけない、価値観を変えないといけない、ということですね。

『これまでの延長線上には未来はこない』と思っています。
これは私の口癖でもあります。
けれど、『変化の時代は可能性の時代』でもあります。
頑張っていきましょう!

信時 正人

株式会社エックス都市研究所理事 和歌山県出身
東京大学都市工学科卒
三菱商事株式会社(情報産業、開発建設、金融)を経て、(財)2005年日本国際博覧会協会(政府出展事業 企画・催事室長:日本館の企画・運営、政府主催催事担当)、東京大学大学院特任教授(UDCK、柏の葉アーバンデザインセンターの立ち上げ)、横浜市入庁後に都市経営局都市経営戦略担当理事、地球温暖化対策事業本部長等を歴任(横浜スマートシティプロジェクト、環境未来都市等推進)。
東京大学まちづくり大学院非常勤講師、横浜国大客員教授等、他に(一社)UDCイニシアチブ理事(UDCの拡大と立ち上げ支援を目的に出口東大教授等と設立)

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